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2020.06.23

競合他社名KWの是非。囚人のジレンマと検索数で読み解く競合対策

 競合他社名キーワード、掲載する?しない?というのは、リスティング広告をかじったことのある担当者でしたら、一度は考えたことがあるのではないでしょうか。試しに掲載してみたら、他社から掲載やめてくれと連絡が来たり、その割に結構獲得に貢献してくれるキーワードなのでどうしたものかと悩んでみたことはありませんか?獲得に結び付くから、という理由で掲載し続けたら競合他社に自社のブランド名を掲載されてしまい、結果として両社でお互いのブランドキーワードは買わないという紳士協定を結んでみたりするケースもありますよね?

 もちろんこの問題は広告主企業の広告出稿に対するポリシーによるところも判断基準となりますから、我々としては広告主の判断に従うことになります。一方で我々がフォローアップできる点は「広告効果に対する影響」ですから、今回についてはただ単に損か得かというシンプルなテーマについて、囚人のジレンマのモデルを使って答えを出そうと思います。

 ちなみに答えだけ知りたい。という方や、このタイトルでピンときてしまった方は以下目次の「競合ブランド名と自社ブランド名の検索数を比較せよ」から読んでいただければよいと思います。

囚人のジレンマとは?

 囚人のジレンマについての一般的な説明ですから、ご存知の方は飛ばして次の章からお読みください。

 例えばここに、共謀して強盗を働いた受刑者Aと受刑者Bがいます。そしてそれぞれが別室に置かれた上で以下のような条件が伝えられます。

・二人とも黙秘した場合は刑期は3年

・自白し捜査協力したら釈放し、もう一方に15年の刑期

・双方ともに自白したら、双方に本来の刑期である10年が課せられる

 さて、この条件下では、裏切りが成功すれば、無罪放免になる一方で、双方ともに自白し捜査協力してしまうと、10年の刑期。一方で双方ともに黙秘していれば3年で二人合わせても6年ですから、両名の刑期を合わせた合計では双方ともに黙秘しているのが合理的です。

▼図1

 しかし、双方の受刑者にとって自分自身がもっとも利益を得られるのは、「相手は黙秘、自分は自白。」という条件ですから、双方が相談して行動を決めることができないため相手が自白することを恐れ、双方ともに自白してしまい良い結果にならない。 という思考実験が“囚人のジレンマ”です。

競合他社キーワードを囚人のジレンマのモデルで検討する

 この「囚人のジレンマ」ですが、「競合他社キーワードの掲載」に似ていませんか?

 他社キーワードを掲載したら、見込のあるクリックを獲得できますが、他社に自社キーワードを買われてしまうと逆に自社の見込み顧客のクリックが減少してしまいます。双方ともに購入しなければ入札の競合も発生せずに双方ともに利益を得られそうだ。という構造です

▼図2

 この情報だけ見ると、双方ともに他社のブランド名を掲載しないのがよさそうです。両社が他社ブランド名を購入し合う状況になると、ブランドキーワードの入札競合によってクリック単価が上昇し、結局得するのはプラットフォーム側(GoogleさんやYahooさん)だけになる。という構図ですね。

 我々のビジネスでは、「両者が相談できない状態にある」という条件はありませんから、双方ともに掲載をしない約束をする言わば「紳士協定が最もよい」という結論に至った広告主はそこそこの数いらっしゃると思います。が、事はそう単純ではありません。

競合他社と取り合う資源を想定すると、最適解が変わる

 図1の囚人のジレンマでは、「刑期」を取り合う資源として想定していましたよね?一方で図2の状況では、双方で取り合っている資源を想定していませんから、この部分の数値を含めて再度検討しましょう。できれば、他社ブランド名掲載によって獲得できるCV数、自社ブランド名を掲載されてしまうことにより取られてしまうCV数。入札競合により発生するクリック単価の上昇。などなど、あらゆる数値を想定したい所ですが、他社にどれくらいCVを取られているか、競合することでどれくらいクリック単価が上がっているかを定量的に想定することはなかなか難しい部分ですから、ここでは単純に「ブランド名の検索数」を取り合う資源として設定しましょう。

[条件]

 A社とB社でそれぞれの会社のブランド名の検索数を以下とする。なお、他社名に掲載した場合のクリック率は5%。自社名に掲載した場合のクリック率を10%とする。

・広告主Aのブランド名検索数:1000回

・広告主Bのブランド名検索数:500回

・自社名に掲載した場合のクリック率10%

・他社名に掲載した場合のクリック率5%

▼図3

 広告主Aにとっては広告主Bが掲載しないという選択肢を取らない限り獲得できるクリック数は減ってしまいます。一方で広告主Bは広告主Aのブランド名を掲載するという選択肢を取れば、いずれの場合もクリック数を増やすことができます。

お互いが掲載を止める紳士協定がいつでも正解とは限らない

 この条件下で広告主Aの取るべき選択肢は双方ともに掲載をやめようという紳士協定を申し入れることです。双方ともに掲載する状況になったら、取られてしまうクリック数の方が大きくなってしまいますから、双方ともに掲載しないで収支をゼロに持って行った方が合理的ですね。

 一方で、広告主Bの取るべき選択肢は仮に相手から双方の掲載をやめようという申し入れがあったとしても、それを無視して掲載し続けることです。他社に掲載されたとしても自社が獲得できるクリック数の方が多く、収支はプラスになりますから。

競合ブランド名と自社ブランド名の検索数を比較せよ

 上記の図3では検索数という資源を想定して検討しました。この条件下ではそれぞれの広告主で取るべき選択肢が明確に分かれます。広告主Aは双方ともに掲載を止めること、広告主Bは他社に掲載されたとしても掲載し続けることです。この2つを分けているのは検索数の大きい小さいであるのは、一目瞭然ですよね。

 これは上記の思考実験では取り合う資源を「検索数」としているからではあるものの、一定の説得力があるものです。自社が掲載したら、他社に掲載されてしまう。他社に掲載されないようにお互い掲載しない約束をしよう。と考える広告主は多いですが、双方が持つ検索数によって合理的な判断は異なるのです。

 いろいろ面倒なことをお話しましたが、結局のところ、

・自社より検索数が多い企業は積極的にブランド名を掲載する

・自社より検索数が少ない企業はお互い掲載しない「紳士協定」を申し入れる

という選択肢を各競合他社ごとに対応していくことが、競合キーワードの掲載において合理的な判断になります。

ブランド力のある大手企業にも出来ることがある

 ここまでの話をものすごく簡単にまとめてしまうと、他社ブランド名・自社ブランド名の掲載においては、ブランド力のある企業が不利でブランド力のない企業が有利である。という結論に至ります。お互いの掛け金と得られるリターンに双方で差がありますから、これはどうしようもない事実です。

 ブランド力のある企業側がこの問題を本質的に解決させるのは非常に難しいのですが、黙ってクリックを取られてしまう状況を回避し、被害を最小限に抑える手立ては残されています。

例えば、

・商標ブロックを申請

・第三者指摘を継続して実施

・掲載停止の申し入れを繰り返す

・ブランド名キーワードの広告文のクリック率を上げる

・表示オプションを網羅し表示位置を確保する

など、広告運用の基本を見直すことである程度被害を少なく抑えることができます。

 また、上記以外でも、弊社で取り組んで大きな成果を上げた調整方法もいくつかあります。すべての広告主に当てはまるわけではないですが、弊社の広告主で実際に実施し、いずれの施策も大きな結果を生みました。詳細をここに記載することは差し控えますが、リスティング広告の仕組みや構造、競合他社の動き方などを考慮すれば、出来ることは上記に記載したセオリー通りの施策にとどまらず意外に沢山あるかもしれません。

※この点にお悩みの広告主の方はぜひご相談ください

このお話の問題点

 さて、ここまでお話しておいて、最後に留意点について補足します。今回は「検索数」で比較していますが、これには一つ重要な論点がかけています。「コスト」の観点です。双方ともに入札競合した場合、オークションよってコストが増加する。という問題が同時に発生してしまいます。これは費用対効果に対して非常に大きな影響を及ぼしますから、本来であれば上記の判断モデルに組み入れたい所です。

 が、入札競合によるコスト増はなかなか想定するのが難しいところですから、今回は上記モデルに含めていません。この点も考慮して判断をしていくとしたら、検索数の差がそれほど大きくなければ、他社ブランド名の検索数が多かったとしても、双方ともに掲載しない協定を結んだほうが良い。という結論に至ると予想されます。コストやCVRも含めたモデルについてもいずれ時間をとって整理したいと思います。

 また、この記事の冒頭でもご説明した通り、競合キーワードの掲載は各広告主のポリシーに依存する部分でもあります。掲載したほうがリスティング広告の成果があがるという1点をもって、各広告主の同業他社やユーザーとのコミュニケーションの取り方を変える理由にはならないでしょう。あくまでもリスティング広告の特定のキーワードにおける損得の提案過ぎない。という点をご留意ください。

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