法律・NG・事例がわかる!景表法かんたん解説
Web広告に限らず、商品・サービスの販売や宣伝に携わっている人なら「景表法(不当景品類及び不当表示防止法)」という言葉を聞いたことがある方がほとんどだと思います。しかし景表法が具体的に何を定めた法律か、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
景表法とは、簡単に言えば「消費者がカン違いしてモノを買わないよう、企業は適正な情報を宣伝してくださいね」という法律です。
「当たり前では?」と思われたことでしょう。私もそう思います。しかし世間では景表法に違反したとして摘発される事業者が後をたたないのも事実です。
この記事では景表法の内容を、私と同じく法律に明るくない人でもわかりやすいように解説します。またNGとされる広告の例や、過去の摘発事例なども紹介し、景表法への理解を深める資料としてご利用いただけるようにしました。
企業のPR担当者や広告クリエイティブを作る方は、適法な広告制作ができるようぜひ本記事を参考にしてください。記事末尾には参考資料集も付しましたので、あわせてご参照ください。
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目次
景表法の2つの軸
景表法には2つの軸があります。
- うそや大げさな表示など、消費者をだますような表示を禁止すること
- 顧客を自社商材にひきつける目的であまりに高額な景品を提供することを禁止すること
この法律で禁止されている表示は、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他誤認されるおそれのある表示」の3つに大別されます。また顧客を自社の商品・サービスにひきつける目的で提供される景品に関して、「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」の3パターンに分け、景品の上限金額を定めているのもこの法律です。
2つの目的が1つの法律にまとめられているようにも思えますが、「事業者と消費者個人ができる限りフェアな条件で取引できるようにする」という理念が根底にあります。
景表法に違反するとどうなる?
消費者庁は商品・サービスに優良誤認の疑いがある場合、事業者に表示の裏付けとなる資料の提出を求めることができます。事業者は根拠提出を求める文書が送付されてから15日以内に、表示の根拠となる資料を提出しなければなりません。
15日以内に資料を提出できない場合や、提出できても表示の根拠が不十分とされた場合には、不当表示と認められてしまいます。正当な事由があれば15日以上の期間がかかってもよいとされますが、根拠とするための調査をおこなうなどの事由では正当とはみなされません。
景表法に違反したとみなされると、誤認されるおそれのある表示の排除や再発防止策の策定などの「措置命令」が出されたり、内容に応じた課徴金の支払いを命じられたりといった罰則が与えられます。
そのほか直接的な罰則ではありませんが、消費者からは「あの企業はウソをついていた」とみなされ、顧客の信用を大きく落とす可能性も考えられるでしょう。
禁止されている広告表現リスト
景表法で定められた「表示」とは、商品・サービスに関するあらゆる説明文やグラフィック表現を指します。たとえば商品名や原材料表示、店頭での売り文句、Webサイトの紹介文など、広告に限らず幅広い表現が「表示」にあたります。
・商品、容器又は包装による広告その他の表示及びこれらに添付したものによる広告その他の表示
表示に関するQ&A(消費者庁)
・見本、チラシ、パンフレット、説明書面その他これらに類似するものによる広告その他の表示(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)及び口頭による広告その他の表示(電話によるものを含む。)
・ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオン・サイン、アドバルーン、その他これらに類似するものによる広告及び陳列物又は実演による広告
・新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備又は拡声機による放送を含む。)、映写、演劇又は電光による広告
・情報処理の用に供する機器による広告その他の表示(インターネット、パソコン通信等によるものを含む。)
景表法では次の3つの表示を禁止しています。
- 優良誤認表示
- 有利誤認表示
- その他誤認されるおそれのある表示
それぞれ簡単に解説します。
禁止表示1.優良誤認表示
優良誤認表示とは、「実際はそうでないものを『これはとても良い商品・サービスだ!』と消費者に思わせるような表示」のことです。
たとえば「A5ランクの和牛」と称してそれに満たないランクの牛肉を販売したり、「東大50名合格!」と宣伝する予備校の合格実績が実際にはそれより少なかったり、といった事例が当てはまります。
【参考:景表法5-1】
商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
禁止表示2.有利誤認表示
有利誤認表示とは、「実際はそうでないものを『これはとてもお得だ!』と消費者に思わせるような表示」のことです。
たとえば太陽光発電を導入すれば電力の売却益で「月々◯◯円、必ず利益が出る」と思わせるような表示をしたり、表示されている価格だけで希望する美容整形施術がすべて受けられると思わせるような表示をしたり、といった事例が当てはまります。
【参考:景表法5-2】
商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
禁止表示3.その他誤認されるおそれのある表示
景表法では優良誤認・有利誤認のほかにも、6つの誤認されやすい表示について制限事項を設けています。
- 無果汁の清涼飲料水等についての表示
- 商品の原産国に関する不当な表示
- 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
- 不動産のおとり広告に関する表示
- おとり広告に関する表示
- 有料老人ホームに関する不当な表示
それぞれの制限事項は以下のとおりです。
【参考:景表法5-3】
前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
無果汁の清涼飲料水等についての表示
清涼飲料水、乳飲料、アイスクリームなどの商品は、以下の条件を満たさなければ「果実名を用いた商品名・説明文など」「果実の絵・写真・図案」「果汁・果肉と似た色、香り、味」を表示することができません。
商品の種類 | 条件 |
無果汁・無果肉 | 無果汁・無果肉であることを明瞭に表示 |
果汁・果肉の量が5%未満 | 果汁・果肉のパーセンテージを明瞭に表示 |
商品の原産国に関する不当な表示
一般的な消費者が原産国を判別することが難しい商品の場合、次の表示は不当とみなされます。
- 原産国以外の国名、地名、国旗など
- 原産国以外の国の事業者名、デザイナー名、商標など
- 国内産の商品について文字表示の全部または主要部分が外国の文字で示されている
- 外国産の商品について文字表示の全部または主要部分が和文で示されている
消費者信用の融資費用に関する不当な表示
ショッピングローン、クレジットカード、消費者金融といった消費者信用の融資費用について、実質年率が明瞭に記載されていない場合、以下の表示は不当表示となります。
- アドオン方式による利息、手数料その他の融資費用の率の表示
- 日歩、月利等年建て以外による利息、手数料その他の融資費用の率の表示
- 融資費用の額の表示
- 返済事例による融資費用の表示
- 融資費用の一部についての年建てによる率の表示
不動産のおとり広告に関する表示
不動産取引において、消費者を呼び込むためにおこなう以下の表示は不当表示です。
- 実在しないため取引できない不動産
- 実在するが、売約済みなどで取引の対象にならない不動産
- 実在するが、希望者には別物件を勧めるなど取引する意思がない不動産
おとり広告に関する表示
不動産以外の商品・サービスでも、一般消費者を呼び込むためにおこなう以下の表示は不当表示です。
- 取引準備ができていないなど、取引に応じることができない場合の商品・サービスについての表示
- 商品・サービスの供給量がとても少ないのに、そのことが明示されていない場合
- 商品・サービスの一人あたりの供給量がとても少ないのに、そのことが明示されていない場合
- 取引成立を妨げようとするなど、実際には取引する意思がない商品・サービスについての表示
有料老人ホームに関する不当な表示
有料老人ホームの施設・設備、サービスについて以下のような表示は不当表示にあたります。
- 入居後の居室の住み替え条件がハッキリ書かれていない
- 介護サービスをおこなうのはその老人ホームではないということがハッキリ書かれていない
- 夜間の介護職員や看護師などの最少人数がハッキリ書かれていない
キャンペーンに提供される景品類の価額制限
景表法ではあまりに高額すぎる景品類の提供を禁止しています。ここでいう景品とは、「顧客を誘引する手段として、取引に付随して提供する、物品や金銭など経済上の利益」のことです。
「経済上の利益」には物品、不動産、金銭そのもの、金券、有価証券類、イベントへの招待や優待、その他のサービスなど一般的に消費者の利益になると考えられるものが幅広く含まれます。ただし、「値引き」や「アフターサービス」などは該当しないとされています。
また景表法ではキャンペーンの種別を「一般懸賞」「共同懸賞」「総付景品」の3つに分類し、それぞれ提供価額の制限を設けています。
- 一般懸賞…商品・サービスの利用者に、くじ等の偶然性・特定行為の優劣等により景品類を提供すること。(例)5,000円以上お買い上げのお客様から抽選で商品券をプレゼント
- 共同懸賞…商品・サービスの利用者に、一定の地域や業界の事業者が共同で景品類を提供すること。(例)◯◯商店街でお買い上げのお客様にくじで景品をプレゼント
- 総付景品…懸賞ではなく、商品・サービスの利用や来店したすべての人に景品類を提供すること。(例)創業記念日にご来店のお客様全員に記念品プレゼント
それぞれの制限内容は以下の表のとおりです。
種別 | 条件 | 景品類の最高額 | 景品総額の限度額 |
一般懸賞 | 取引価額5,000円未満 | 取引価額の20倍 | 懸賞にかかる売上予定総額の2% |
取引価額5,000円以上 | 10万円 | 懸賞にかかる売上予定総額の2% | |
共同懸賞 | 取引価額にかかわらず | 30万円 | 懸賞にかかる売上予定総額の3% |
総付景品 | 取引価額1,000円未満 | 200円 | 定めなし |
取引価額1,000円以上 | 取引価額の10分の2 | 定めなし |
過去の摘発事例
ここでは景表法による過去の摘発事例を数例紹介します。
景表法に反しているとして摘発される事業者の例は後をたちません。それらの多くは自社に不都合な事実を隠し、消費者に益のないサービスを提供しようとしたことが明るみに出たものです。
しかし「これを取り締まられたら広告できない!」と嘆くのではなく、ルールの中で最適な表示をするように心がけなければなりません。また根本的に、ウソをつかなければ売れないような商品は販売するべきではないと言えるでしょう。
事例1.販売実績のない「当店価格」
対象となる表示 | スーパーで販売する食料品のチラシ |
表示の内容 | 販売価格に「当店価格」と称する価格を併記し、まるで通常販売価格よりも安いかのように表示。 |
実際の内容 | 該当する商品が「当店価格」で販売されたことはなかった。 |
該当する不当表示 | 有利誤認 |
事例2.表示ほどの明るさがない電球
対象となる表示 | 一般照明用電球形LEDランプの商品パッケージ、店頭POP、Webサイト |
表示の内容 | 「電球60形相当の明るさ」などの記載により、白熱電球60ワット形と同じ明るさがあるように表示。 |
実際の内容 | 用途によっては白熱電球60ワット形ほどの明るさが得られなかった。 |
該当する不当表示 | 優良誤認 |
事例3.集計法を隠して就職率を水増し
対象となる表示 | 専門学校において提供する専門課程のパンフレット、新聞広告 |
表示の内容 | 就職率を「99.2%」などと記載することで、受講した専門分野への就職率が高いように表示。 |
実際の内容 | 受講した専門分野への就職率は52.8%だった。 |
該当する不当表示 | 優良誤認 |
事例4.「コンプガチャ」はなぜNGか
「コンプガチャ」とは「有料かつ確率で提供されるA・B・C・D・E・Fのアイテムをすべて集めたら特別なアイテムがゲットできる」といった方式でおこなわれるガチャのことです。
スマホゲームなどで一時期流行した「コンプガチャ」は、景表法上いわゆる「カード合わせ」による景品類提供にあたり、現在は全面的に禁止されています。
禁止された理由は、「欺瞞性の高さ」と「射幸心をあおる度合いの高さ」にあります。コンプガチャにおける欺瞞性とは、消費者庁のFAQから引用すると以下のように表されています。
「カード合わせ」において欺瞞性とは、当選率に関して錯覚に陥らせることをいいます。
そして、当選率に関する錯覚とは、「カード合わせ」においては、「途中まではすぐに集まるものの、次第に集まりにくくなる」点に錯覚が生じることをいうと考えられます。
インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A
具体例で説明しますと、サイコロを振り1から6までの数字を全部そろえさせる場合、最初は1から6のどの数字でも良いので確率は6分の6です。しかし、2つ目は6分の5、3つ目は6分の4と徐々に下がります。(中略)ところが、消費者は、3つ目までそろえた時点で、それまでに要した回数と同じ程度の回数で6つ目まで全てそろうと誤解する可能性があります。
この例に従えば、サイコロを振り1から6の数字を全部そろえさせる場合、3つ目までがそろう確率は約55.6%(9分の5)であるのに対し、全てがそろう確率は約1.5%(324分の5)となります。
まとめ
こうして景表法についてざっくり眺めてみると、事業者が守らなければならないルールばかりで窮屈だと感じるかもしれません。しかし事業者と消費者個人のあいだで商品・サービスに関して持てる情報量を比べると、どうしても事業者が圧倒的に多くなるものです。また、事業者が情報を隠そうとすれば、消費者にはそれを感知するすべがほとんどなく、表示された情報をうのみにするほかありません。
そのような不均衡な情報バランスをできる限り是正し、公正な取引がおこなわれるようにするのが景表法の役割だと言えるでしょう。
本記事を書くにあたり、参考にした資料を以下に示します。ぜひこちらもあわせてご参照ください。