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2024.07.02 更新
2024.07.02 更新

Cookie規制の影響とは?Web広告の成果を保つための対策を解説

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S.S.

広告運用オペレーター/コンテンツライター

Cookie(クッキー)とはWebサイトにアクセスしたときに端末上のWebブラウザーに記録されるテキストファイルのことです。
主にSNSやWebサイトにログインする際のIDやパスワード、カートに入れた商品などの情報、過去に入力したクレジットカード情報、お届け先の電話番号や住所などの照会に活用されます。
サイト訪問の際にログイン時の入力の手間が省けるなど、ユーザーにとってもメリットが大きい反面、行動履歴など個人情報が残るためプライバシーの保護の観点からも近年問題視されています。

Cookieを利用する目的

主に使用されるCookieは大きく分けて2つあり、それぞれCookieの発行元となるドメインが異なります。

ファーストパーティー

ファーストパーティーCookieは、訪問したWebサイトのドメインが直接発行するCookieのことです。
ログイン情報のほか、カートの中身ユーザーの登録情報などが含まれます。
同一サイトで複数回買い物をする際など、住所や連絡先を何度も記入する必要がなくなるため、ユーザーのメリットが大きいのも特徴です。
基本的に訪問したWebサイトのみで利用でき、ドメインの異なるウェブサイトへの横断はできません。
また、スマホでログインした後、パソコンで同一サイトを閲覧する際に再びログイン情報を求められるなど、ブラウザや端末が違えば別のユーザーとして識別されます。

サードパーティー

サードパーティーCookieは、訪問したWebサイト以外の第三者が発行するCookieのことで、昨今Cookie規制の対象となっているのは、主にこのサードパーティーCookieです。
ファーストパーティCookieとは異なり、ドメインの異なる他Webサイトへの横断が可能です。
広告媒体社のドメインから発行されることが多く、多くはWeb広告などに活用されます。
例えばECサイトで商品をカートに入れたままサイトを離れたユーザーに対し、別のサイト上でカート内の商品や類似商品の広告を表示するなど、ユーザーの行動履歴に合わせた広告のターゲティングが可能となります。
ユーザー視点では、関心の高い広告が表示されることで、商品の買い忘れを防いだり、お気に入りのブランドのセール情報を知ることができるといったメリットもあります。

Cookie規制の背景

ファーストパーティーCookieはログイン時の手間を省くなどユーザーにとってもメリットが大きい一方、
サードパーティーCookieは「何度も同じ商品の広告が出る」「サイト上の動向を監視されているように感じる」など否定的な意見が多いのが現状です。
また、情報漏洩のリスクやプライバシーの観点から規制の動きが広がってきています。

Cookieが規制される理由

先にも述べた通り、Cookieのうち「サードパーティー」については、ユーザーがサイトを離れた後の行動まで追跡することが可能です。
そのためユーザーの意思に関係なくサイト上での行動履歴を収集され、その情報を基に望んでいない広告が表示されるなど、プライバシーの侵害と感じることもあります。
またCookie自体は個人を特定するものではありませんが、複数の行動履歴から、家族構成や年齢・性別、居住地など個人特定になり得る情報を収集出来てしまう可能性を否定できません。
サイバー攻撃などによる情報漏洩の観点からも問題視される動きが強まっているのです。

法律の影響

現在、EU諸国をはじめ世界的にもCookie規制の動きは広がっており、日本でも近年規制が厳しくなってきています。

EU域では、2002年に施行、2009年に改正された「ePrivacy指令」において、WebサイトがCookieを取得する際、厳格に必要なCookieを除きユーザーへの情報利用の同意取得が求められるようになりました。

またePrivacy指令を補完する形で後に定められた「GDPR」では、データ保護を強化し統合することを意図し、個人に関係する情報(氏名、自宅住所、写真、パスポート情報、クレジットカード情報、電子メールアドレス、銀行口座の詳細情報、ソーシャル・ネットワーク・ウェブサイトへの書き込み、医療情報、コンピュータのIPアドレスまで、あらゆるものを含む)の保護及び取り扱いについて定められています。世界で最も厳しいプライバシー法と言われており、EU域及びEU域外への個人データの移転の際にも適応され、違反した場合警告や過料など処罰の対象となります。

米国においても個人情報に対する規制の動きがあり、法律としてはプライバシー保護を目的とした州法の「CCPA」などが最も有名です。こちらも個人データを対象とした定義が多くあり、Cookie取得時に注意が必要となっています。

これまで日本ではCookieに関する指針はありませんでしたが、2022年4月に「改正個人情報保護法」が施行されたことで、日本においてもCookieについて規制の対象となりました。
また現在GoogleではGA4にてGDPRを準拠する動きがみられており、今後日本でも影響が広がる可能性が高いと考えられます。

現在の規制状況

サードパーティCookieはGoogleをはじめ廃止される流れになっていますが、Cookie自体については全てが規制の対象となっているわけではありません。
現状ではCookieの取得時、所定の規定に従い事前に本人の同意を得ることで第三者利用が可能となっています。
これについては今後の改正により変化していく可能性もあるでしょう。

広告への影響

広告への影響は既に出ています。
日本ではiPhoneのシェアが高く、Apple社の提供しているブラウザであるSafariを使用しているユーザーが多い傾向にあります。
Safariはプライバシー保護を目的に2017年から独自にCookieに対する規制(ITP:サイトのトラッキング防止機能)を行っており、以前から広告への影響が確認されていました。

ITPは年々機能のアップデートが行われており、Safari上だけでなく現在はGoogle ChromeやYahoo!JAPANにおいても既にサードパーティーCookieはデフォルトでブロックされています。近年のアップデートによりCookieの保有期間も短くなっていることから、広告においてリマーゲティング広告の配信量減少や、CV計測値と実数値の乖離拡大、アトリビューションの分析が難しくなるなど大幅に影響を受けているのが現状です。
特に購入や申し込みまでの検討期間が長い商材については、Cookieの保有期間が短くなった影響を受けやすいとされています。検討期間中にCookieの保有期間が切れることで新規ユーザーとして計測されてしまい、ユーザーの行動履歴が追えなくなることがあるためです。
AndroidユーザーにもサードパーティCookie廃止の対象が広がることから、各広告主においてこれまで以上に影響が広がる可能性が考えられます。

各広告媒体社としても、今後サードパーティーCookieを使ったターゲティングを廃止するなどCookie規制を準拠する動きが広がっている一方で、媒体側としても広告費の減少は企業の存続に関わるため、各社取得する情報をファーストパーティー経由に変更するなど順次対策が進められてきています。
これによりCV計測は一定数維持できると予想されますが、リマーゲティング広告については残念ながらいずれ廃止の流れになるのでは?とも言われています。

ファーストパーティCookieに対応している媒体の例
GA4
Google広告
Yahoo!広告
Meta広告

対策

先にも述べた通り、Googleをはじめとした広告事業者はCookie規制により広告費への影響を受ける立場であるため、さまざまな対策がとられています。
今後も使用できるターゲティングを最大限活用できるよう備えることが大切です。

GAリマーケティング

GA4では取得するCookieをファーストパーティにしていることから、今後もリマーゲティングの実装が可能です。
ただし、Cookieの保有期間が短くなったことで配信に必要なリストの最小数に満たないなど、アクセス数の少ないサイトでは実装が難しいのが現状です。

ディスプレイ広告におけるキーワードターゲティングの活用

今後はCookie情報を必要としないターゲティングの活用が重要となってきます。
Cookieの廃止によって性別や年齢、居住地、興味関心など、オーディエンスターゲティングができなくなる、または精度の低下が考えられます。
ユーザーの属性に対するターゲティングから、サイトの属性(指定のキーワードなどに関連するサイト)に対するターゲティングへの切り替えを検討する必要が出てくるでしょう。

Googleファインド広告の活用

Cookieを使用する代わりに、 Googleユーザーのログイン情報を活用したターゲティングを行います。プライバシー保護に配慮した広告とされ、Cookie規制後も精度の高いターゲティング維持が期待できます。

LPの改修

ターゲティングの精度が低下することで、来訪ユーザーの商材との関連性は低くなると予想されます。今後は広告手法を切り替えるのと同時に、サイト自体のブラッシュアップを行い、CVR向上を目指すことも重要になってきます。

まとめ

現在EU域では最も厳しいCookieの規制が制定されていますが、いずれは世界的な基準となっていく可能性も否定できず、日本においても広告への影響は今後拡大していくことが予想されます。

Cookieはユーザーにとってサイトの利便性を高める機能であり、また企業にとっても広告成果を向上するための重要なツールです。互いに無くてはならない仕組みではあるものの、特に情報の取り扱いについては慎重にならなくてはなりません。
広告によってはユーザーに不快感を与える可能性があるといった点でも、Cookie情報だけに頼った広告手法を見直す時期にきているのかもしれません。

Written By
S.S.

広告運用オペレーター/コンテンツライター

Web広告運用業界完全未経験で入社するも、持ち前の「なんとかなるか」精神でバリバリ現場をこなした結果、野生のプランナーとして自立。人生一度きりをモットーに現在は広告運用・コンテンツライティング業務の傍ら趣味で野菜を育てている。