ChatGPTで仕事を“ちょっとラク”にする「かしこい使い方」とは?
言語生成AIツール「ChatGPT(チャットジーピーティー)」が、いまインターネットを中心に大きなムーブメントになっています。しかしまだまだ一般レベルでは「ChatGPT?あー、なんかよくわからないけどすごいんだって?」くらいの扱いであることも、否定はできません。
そこで、ChatGPTリリースから約半年が経過した今、あらためて「ChatGPTとは?」を整理しなおしたいと思います。そして私たちの普段の仕事のレベルではどのように活用できるのか、またより上手に使うにはどうすればよいのかを考えてみました。
日本政府も注目するなど今後も大きな話題になるであろうChatGPTをここで理解し、周囲に先んじて身の回りの仕事をAIで効率化できるようにしてみましょう!
目次
ChatGPTとは?
ChatGPTとは、OpenAI社が開発した「GPT」と呼ばれる生成系AIが組み込まれたチャットボットです。厳密には異なる概念ですが、PCとOSの関係といえばわかるでしょうか。私たちが操作できるインターフェースがChatGPTであり、その機能を実現するエンジンがGPTです。
【生成系AI】
生成系AIとは画像や音楽、文章などの創作物を作る機能を持ったAIの総称。ChatGPTはそのなかでもテキスト生成に特化した生成系AIです。
一般的に「チャットボット」といえば、ユーザーの質問に対しサービスのヘルプやFAQなど決まった形式の回答を返す機能を指します。しかしChatGPTはユーザーの質問に対し、まるで人間がその場でタイピングをしてチャットを返しているような回答ができます。
▲規定の回答をおこなうのではなく、ユーザーの問いかけに応じた内容を生成する。
ChatGPTはふだん私たちが使っている言葉(自然言語)で作業を指示できます。このことはChatGPTを一般に普及させた大きな要因の一部だと考えられるでしょう。
たとえばWebサイトを作るにはHTML・CSS・PHPなど目的にあった特定の言語を使う必要があり、専門的に訓練した人でなければ思ったようにWebサイトを作るのは難しいですよね(いまはノーコード、ローコードでサイトが作れるサービスもたくさんありますが)。
しかしいまやChatGPTに「●●のHTMLコードを書いて」と指示すれば、適切だと思われるコードが得られるようになったのです。Webサイトだけでなく、あらゆるプログラミング言語でも同様です。習得に時間と実務経験が要求されていた技術が、ChatGPTの登場によってより一般的に扱える技術になったとも言えるでしょう。
▲あっという間にコーディングしてくれる。
▲動画内で出力されたHTMLコードはこんなサイトになる。
これだけではもちろん不足ですが、HTMLを全く知らない人が30秒でこれを作れると思うとすごいですよね。
使い方を工夫すれば、現在あなたがおこなっている業務を効率化するだけでなく、新たなスキルを習得するためのハードルを大きく下げてくれるはずです。
ChatGPTに「判断」はない
ChatGPTが出力する文章はとても「それっぽい」ので、しばらく遊んでいると本当に知性があるように感じてきたりもします。しかし実際のところChatGPTは何かを考えたり、価値判断をしてテキストを出力するわけではありません。
非常に単純化して言うと、ChatGPTは「前の言葉に続く可能性の高い言葉を書いていく」というシステムで動いています。「この回答はユーザーの指示に沿っているか?」といった、人間の作業者であれば普通におこなう判断をChatGPTはしません。あくまで確率にもとづいて文章を続けているだけです。
ところが5兆語とも言われる膨大な量のデータを学習した結果、確率で文章を書いても「なぜかそこそこまともな文章になる」という能力を得てしまったのだから不思議ですね。
ChatGPTは判断をおこなわないため、たとえば「AとBを評価して、より良い方を選べ」といった作業は向いていません。実行すると非常にそれらしい回答をしてくれますが、実際には何も考えていないということを覚えておきましょう。
▲非常にもっともらしい回答だが、鵜呑みにはできない。
このような作業をさせる場合は、ChatGPTの意見はあくまで参考にとどめるのがよいでしょう。
ChatGPTは「ウソつき」か?
ChatGPTが学習しているデータは2021年までにインターネットに公開された情報までです。インターネットを検索して回答する機能は備わっていないため、2021年以降の情報や、リアルタイムのできごとについては正確な回答ができません。
【ChatGPTとインターネット】
2023年5月12日、OpenAI社はChatGPT PLUS(有料版)限定でWeb検索機能のベータ版をリリースしました。これにより2021年以降に公開された情報や、リアルタイムで更新されている情報をもとに回答を出力できるようになりました。
あえて不正確な回答をするような質問をしたり、上記の事実を知らずに使っていたりする場合、ChatGPTは不正確な回答をすることがあります。サービスがリリースされたころ、盛んにChatGPTの「珍回答」がネタにされていたのは、これが理由です。
▲GPT-4はハルシネーションを引き起こさないよう調整されている。
以前はユーザーがウソを教えると簡単に意見を変えていました(そもそも第1回日本シリーズは1950年だが)。
現在使われているGPT-4というバージョンになってからかなり減りましたが、事実と異なることやデータとして学習していないことを質問すると、まことしやかなウソをつくことがあったのです。これをAIの「ハルシネーション(幻覚)」と呼びます。
ChatGPTができること
ChatGPTはユーザーの指示に沿ったテキストを自動で生成するAIですから、言葉で表現できる作業全般を実行することができます。代表的な例は以下のとおりです。
- 外国語の翻訳
- 文章の要約
- データの分析
- その他の文章ライティング
特にある程度フォーマットやルールが決まっており、「正解」といえる出力がある作業がChatGPTは得意です。
ChatGPTに向いていないこと
ChatGPTは言葉で表す作業全般をこなせますが、満足なクオリティが出しにくい作業も存在します。たとえば以下のような作業は、今のところ人間が実行するほうがクオリティが高くなりやすいと言えるでしょう。
- 小説や詩、広告などクリエイティブな文章制作
- 事実情報の検索
- 複雑な数学的計算
「ChatGPTは英語で使え」はホント?
最新版のChatGPTであれば、日本語で利用しても十分なクオリティの出力が得られます。
ChatGPTがリリースされた当初、英語で指示した場合と日本語で指示した場合の回答には、明らかにクオリティの差がありました。しかしChatGPTの言語処理エンジンが最新版(GPT-4)になると、日本語での出力のクオリティが大きく改善されました。
▲数値はOpenAI社公式データより引用
実際、OpenAI社が発表しているデータによれば、前世代のChatGPT(GPT-3.5)を英語で利用するよりも、最新のChatGPT(GPT-4)を日本語で利用するほうが、回答の正確性が高いとされています。
今のところ最新版のChatGPTは有料版でしか利用できませんが、英語ではなく慣れ親しんだ日本語で先進的な技術を使えるのはとてもありがたいことだと思います。
ただし、英語で利用した際の回答クオリティが最も高いことに変わりはないため、ある程度英語が使える方は英語でChatGPTを使うのも選択肢のひとつです。英語に慣れていない方でも、
- 日本語で指示を書く
- 書いた指示をChatGPTで英語に翻訳する
- 翻訳した指示をChatGPTに実行させる
- 出力された文章をChatGPTで日本語に翻訳する
といったステップを踏めば、英語でChatGPTを使ったのと同じクオリティの出力が得られるはずです。
▲ステップ1・2
▲ステップ3
▲ステップ4
ChatGPTの始め方
ChatGPTは3分もあれば誰でも簡単に使い始めることができます。まずは以下のリンクからChatGPTの公式ページにアクセスしてください。
参考ページ:https://openai.com/blog/chatgpt
「Try ChatGPT」ボタンをクリックします。
ログイン画面に移動しますが、まずは「Sign up」ボタンからアカウントを作りましょう。
「Email address」の欄に好きなメールアドレスを入力し、「Continue」をクリックします。Gmailまたはマイクロソフトアカウントを持っている方は、それらを流用することもできます。メールアドレスを指定したら、次の画面で氏名、電話番号を記入します。
すると指定したアドレスに認証メールが届くので、認証リンクをクリックし、登録完了です。
ChatGPTの活用アイデア
仕事などで日常的におこなう作業にChatGPTを活用することで、作業の効率化やクオリティアップが可能です。その中でも、個人的によく使う活用法を5つ紹介します。
- 誤字脱字のチェック
- アイデアのブラッシュアップ
- 海外ニュースのキャッチアップ
- Excel、スプシの関数設計
- 特定の文体をシミュレートする
先述の通り得手不得手はありますが、この他にも使い方しだいで多くの作業にChatGPTの能力を活かせるはずです。それぞれ簡単に実例を見てみましょう。
【プラグインでさらに機能が広がるChatGPT】
Web検索ができるようになったのと同時に、ChatGPTはさまざまな機能を持つプラグインと連携し、より広範囲なタスクを実行できるようになりました。たとえば、従来は苦手とされていた複雑な数学的計算は「Wolfram(ウルフラム)」というプラグインを使えば対応可能です。そのほかにもグルメ情報を調べたり、ファッションアイテムを提案したり、旅行計画を立ててくれたりと、単なる「テキスト生成マシン」以上の日常的なアシスタントとしてChatGPTが役立つようになりました。
1.誤字脱字のチェック
よくある誤字脱字の範囲なら、ほぼ100%の精度で誤字脱字を修正してくれます。以下の画像はより性能が高いGPT-4で実行していますが、無料版のGPT-3.5でも十分使える性能です。
2.ひとりブレインストーミング
ChatGPTとチャットでブレインストーミングをすることで、自分のアイデアのブラッシュアップに役立ちます。いわゆる「壁打ち」的な使い方ですね。
実際には1往復だけでなく何度もやり取りをすることで、課題への洞察を深めたり、新たな切り口を得たりすることができるでしょう。
3.海外ニュースのキャッチアップ
ChatGPTの翻訳能力を使えば、自分の興味ある分野について海外でおこなわれている報道を日本語でキャッチすることが可能です。
たとえばこんな英語のサイトでも…
▲BBCより引用
指示と翻訳したい文章を雑に投げるだけで、
ものの数秒で日本語にしてくれます。
ジャンルによっては海外報道のほうがスピード感があることもありますし、手軽に翻訳されたニュースが読めるようになるのはありがたいですね。
しかし、ただ翻訳するだけなら他の翻訳ツールでもさほど問題ありません。せっかくChatGPTを使うのであれば、「翻訳したニュースを要約させる」とか「重要な部分だけ抜き出させる」などの作業までさせるとより活用できるかもしれません。
4.Excel、スプシの関数設計
ChatGPTを使えば、Excelやスプレッドシートの関数を書いてもらうこともできます。どんな操作ができる関数が必要かを伝えれば、その条件を満たす関数を出力します。
ちなみに表示された関数は右上の「Copy code」からコピーできます。
5.特定の文体をシミュレートする
ChatGPTは、既存の文章を任意の文体に合わせて書き直すこともできます。たとえば、ミーティング中にパパッと取ったメモ書きを、議事録として清書させることができます。自社の議事録のスタイルに合わせて出力フォーマットを作れば、コピペするだけで議事録を完成させることも可能です。
まとめ
ChatGPTがリリースされてから約半年、インターネットでは多くの人が日々「こんな使い方がある」「あんなことに役立てられる!」と議論を交わし、情報を発信しています。あまりにも情報の更新スピードがはやすぎて、最新情報を追うだけでも息切れをするような毎日です。
でも、よく見ていると、「実はそれほど重要でもないな」とか「実際使ってみたけどChatGPT使うまでもないよね」みたいな情報もたくさん混じっています。新たな技術が話題になると、なんでもそれを使ってやってみたくなる気持ちはわかります…(僕もそちら側です)。
せっかく無料で使えるので、気になったらとにかく触ってみるのが一番です。「ほんとに言うほど使えるのかな…?」なんて遠くから眺めているよりは、自分で体験するほうが100倍理解が進みますよ。
それにAIが「最先端技術」扱いされているのは今だけです。時代をリードするテクノロジーを一般レベルで使える機会はなかなかないですし、とりあえずいじっておいて損はないかと思います。
それでは、よきChatGPTライフを…!